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6、六、银河列车站 「银河车站 ...

  •   六、银河列车站

      “刚才的景色变了!”焦班尼惊愕地自语。
      焦班尼发现,他身后的天气轮柱不知何时变成了一个模模糊糊的三角标的形状,如萤火虫似的时隐时现。然后它渐渐清晰起来,最终不再晃动,落在浓青铜色的天野上。
      这也太厉害了!光芒就像丝滑的巧克力,一缕一缕地拼成三角标。焦班尼几乎要喊出来了。

      就在此时,从远处的雾霭中传来了如大提琴一般的嘈嘈声音,仿佛是回答焦班尼的问题。
      「光,即能量。和果子、三角标、还有其他各种各样的东西,都是由形形色色的能量组合而成的。那么按照规则,光在某种特定的条件下也会转化为和果子。你只是从未发现这些规则罢了。而此处不被任何规则约束。」

      焦班尼似懂非懂,默默看向四周。

      那道不可思议的声音又传了过来,不是从前面,不是从后面,也不是从任何地方来的——
      「银河车站,银河车站!」
      更让人困惑的是,焦班尼明明听不懂这句话,却能明白其中的意思。

      是呀,那果然是真正的三角标,山顶上还飘动着画有天鹅形状的测量旗。
      正当焦班尼这么想的时候,眼前豁然开朗,仿佛亿万只萤乌贼一下子化为化石,沉入天空;或者是钻石公司为了奇货可居,故意装作今年收获不佳把钻石藏起来,而藏在那里的钻石却不知被谁突然掀翻,撒了满空。
      焦班尼眼前一亮,不由地擦了好几次眼睛。实际上,那光就像一条宽阔的带子,伸出枝丫,分成两岐,在天野上由北向南缓缓流淌。

      那些闪闪发光的沙石似乎随着空气流动。焦班尼心里想。

      很快,那个大提琴般的声音回应了。
      「是水在流动?是水吗,是的。」

      焦班尼拼命地伸长脖子,想要看清楚天河之水,却怎么也看不清。
      他不太清楚是不是水。但是确实有什么无形的东西在流动,简直和风没有区别,而且它很轻。焦班尼一个人独自思考。
      这时,极远处好像有什么东西在高兴地拍手。
      仔细一看,绮丽的河水甚至已经比玻璃和氢气更清澈了,不时会激起闪动着紫色的细小波浪,像彩虹一样绚丽多彩,无声无息地流淌着。天野上到处都矗立着漂亮的磷光三角标,有青白的,有朦胧的,有三角形的,有厚叶四边形的,也有电光和锁链形状的,各种各样,在原野上闪闪发光。
      焦班尼激动得简直要晃脑袋。紧接着,那美丽原野上的青的、橙的、各种各样的闪耀着辉光的三角标也在各自的区域内摇曳轻颤。

      似乎来到了天上的原野。焦班尼想。可是,他之前不是已经睡着了吗?他绝对不是自己步行走上原野的,即使努力回忆途中的记忆,也什么都想不起来。
      焦班尼突然意识到自己坐在一辆正在行驶着的小火车里。而且从刚才开始,周围就一直哐当哐当哐当哐当。
      原来焦班尼正坐在夜班轻便铁路的车厢里,车厢里挂着黄色的小灯照亮窗外。车厢里的座椅包裹着蓝色天鹅绒,空荡荡的列车上只坐着六七个穿着宽松的阿拉伯风格衣服的人戴着眼镜看书,对面的墙壁上涂着鼠灰色清漆,有两朵闪闪发光的真铜牡丹。
      焦班尼把目光移回自己身边,他突然发现前排的座位上坐着一个个子很高的孩子,穿着一件湿漉漉的黑色上衣,正把头探出窗外看。焦班尼越看越觉得那个孩子的肩膀似曾相识,一想到这里,他就更是忍不住想要弄个明白。就在焦班尼也打算从窗户把头探出来的时候,那孩子突然缩回来头来,看着焦班尼。

      是班长柯贝内拉。
      啊,是这样啊,是柯贝内拉。他原来在和柯贝内拉一起旅行。

      焦班尼正想着,就听见柯贝内拉说:“大家追了很久,但还是没赶上。扎内利追得最紧,却也晚了一步……银河车站的时钟不太准,快了一点。”

      是的,大家是一起来的。
      “下一站到了我们就下车,等扎内利来了再一起走吧。”焦班尼提议。

      “扎内利已经回去了,他爸爸来接他了。”不知为何,柯贝内拉说着,脸色有些发青,一副痛苦的样子。

      焦班尼也觉得自己好像忘了什么或做了什么对不起别人的事,心里有些奇怪,便默不作声。

      不过柯贝内拉看看窗外,精神便已经完全恢复,他神采奕奕地说:“啊,糟糕,我忘记带水壶了,素描本也忘了。不过没关系,已经快到天鹅站了。我真的很喜欢看天鹅,即使它远在天边,我也一定能看见。”
      柯贝内拉目不转睛地盯着一张圆板一样的地图,频频转动。其中,一条铁道线路沿着白茫茫的天河左岸,一路向南而去。而那张地图的精彩之处就在于——一片漆黑如夜的棋盘上,美不胜收地点缀着蓝的、橙的、绿的光点,标志着一个个停车站、三角标、泉水、森林。

      焦班尼总觉得好像在哪里见过那张地图。
      “这张地图是在哪里买的?是黑曜石做的吧!”焦班尼问。

      “在银河车站得到的,你没有得到的吗?”

      “我到过银河车站?”焦班尼指着写着「天鹅站」的北边说,“我们现在所在的地方,就是这里吧。”

      “是的。哦呀,那就是月明夜的河滩吗?”

      焦班尼往那边一看,只见银河岸边闪烁着青白色的光芒,银色的天空芒草在风中摇曳,荡漾起层层波浪,沙啦沙啦,沙啦沙啦。

      “不是月明夜哟,是银河发出的光。”焦班尼说着,双脚蹦蹦跳跳吱吱作响,愉快得简直想跳起来。他从窗户里探出头来,高吹着《巡星之歌》调子的口哨,拼命伸长身子,想要把天河之水研究个透透彻彻。
      一开始,焦班尼怎么也看不清楚,然而随着越来越仔细地观察,他发现那清澈的水比玻璃或氢气还要清澈,时而会因为视线角度的关系,泛起紫色的小波浪,时而又闪着彩虹般的光芒,无声无息无垢地荦荦流淌。
      原野上到处都伫立着漂亮的磷光三角标。远小近大;远的橙黄分明,近的青白朦胧;或三角形,或四边形,或电形或锁链形,在原野上排列成各种各样的形状闪闪发光。
      焦班尼激动得心中扑通扑通直跃动,他用力甩了甩脑袋。于是,那原野上美轮美奂的蓝橙三角标也发出一声叹息,纷纷摇曳弄影。

      “我们究竟要去哪里呢?”焦班尼突然看到天河这边有一间很大的屋子,上面挂着很多滑车和渔网,他问柯贝内拉。

      “到哪儿都行吧。”柯贝内拉呆呆地回答。

      “我们现在已经来到了天上的原野。”焦班尼说,“而且,这列火车竟然不是烧煤的。”焦班尼伸出左手,探出窗外望向车头。

      “没烧煤?可能是用酒精或电吧。”柯贝内拉说。

      此时,那道大提琴一般的熟悉又静谧声音回应了:「这列火车不是靠蒸汽或电力来发动的——因为它必定运动,所以就动了。」

      “那个声音……我似乎在哪里听过。”

      “我也在树林和天河旁边听到过很多次。”

      咣当咣当咣当咣当,精致的小火车遨游在随风摇曳天空芒草下,遨游在天河水与三角点的青色微光中,绵绵不断地驶向远方。

      坐在对面的座位上、穿着鼠灰绉长垂着物的人突然站了起来,他只是整理了一下衣领,周围还是一片凌乱。

      “啊,龙胆花开了。已经完全入秋了。”柯贝内拉指着窗外说。

      铁轨边缘的矮短草丛中,盛开着宛如月长石雕刻而成的紫色龙胆花,葳蕤潋滟。

      “我跳下去摘几朵,再爬回来!”焦班尼的胸中雀跃不已。

      “来不及了。都开得那么远了。”
      柯贝内拉还没说完,又一丛龙胆花闪着紫光掠了过去。

      就在这时,一簇簇黄底杯状的龙胆花从他眼前涌了过去,如雨如虹;行列的三角标燃起耀耀辉光,如烟如火。

      ·

      第三稿(旧版)

      六、銀河ステーション

      (さっきもちゃうど、あんなになった。)
      ジョバンニが、かう呟くか呟かないうちに、愕いたことは、いままでぼんやり蕈のかたちをしてゐた、その青じろいひかりが、にはかにはっきりした三角標の形になって、しばらく螢のやうに、ぺかぺか消えたりともったりしてゐましたが、たうとうりんとうごかないやうになって、濃い銅青のそらの野原にたちました。いま新らしく灼いたばかりの青い銅の板のやうな、そらの野原に、まっすぐにすきと立ったのです。
      (いくらなんでも、あんまりひどい。ひかりがあんなチョコレートででも組みあげたやうな三角標になるなんて。)
      ジョバンニは思うはず誰へともなしにさう叫びました。
      するとちょうど、それに返事をするやうに、どこか遠くの遠くのもやの中から、セロのやうなごうごうした声がきこえて来ました。
      (ひかりといふものは、ひとるのエネルギーだよ。お菓子や三角標も、みんないろいろに組みあげられたエネルギーが、またいろいろに組みあげられてできてゐる。だから規則さへさうならば、ひかりがお菓子になることもあるのだ。たゞおまへは、いままでそんな規則のとこに居なかっただけだ。ここらはまるで約束がちがふからな。)
      ジョバンニはわかったやうな、わからないやうな、をかしな気がして、だまってそこらを見てゐました。
      すると今度は、前からでもうしろからでもどこからでもないふしぎなこえが、銀河ステーション、銀河ステーションときこえました。そしていよいよをかしいことは、その語が、少しもジョバンニの知らない語なのに、その意味はちゃんとわかるのでした。
      (さうだ。やっぱりあれは、ほんたうの三角標だ。頂上には、白鳥の形を描いた測量旗だってひらひらしてゐる。)ジョバンニが、さう思ったときでした。いきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の螢烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたといふ工合、またダイヤモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと獲れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかへして、ばら撒いたといふ風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思はず何ぺんも眼を擦ってしまひました。実はその光は、広い一本の帯になって、ところどころ枝を出したり、二つに岐れたりしながら、空の野原を北から南へ、しらしらと流れるのでした。
      (あの光る砂利の上には、気が流れてゐるやうだ。)
      ジョバンニは、ちょっとさう思ひました。するとすぐ、あのセロのやうな声が答へたのです。
      (水が流れてゐる?水かね、ほんたうに。)
      ジョバンニは一生けん命伸び上がって、その天の川の水を、見きはめようとしましたが、どうしてもそれが、はっきりしませんでした。
      (どうもぼくには水だかなんだかよくわからない。けれどもたしかにながれてゐる。そしてまるで風と区別されないやうにも見える。あんまりすきとほって、それに軽さうだから。)ジョバンニはひとりで呟きました。
      すると、どこかずうっと遠くで、なにかが大へんよろこんで、手を拍ったといふやうな気がしました。
      見ると、いまはもう、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとほって、ときどき眼の加減が、ちらちら紫いろの細かな波をたてたり、虹のやうにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野宿にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立ってゐた青白く少しかすんで、或いは三角形、厚い葉四辺形、あるいは電や鎖の形、さまざまにならんで、野原一杯に光ってゐるのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。するとほんたうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかゞやく三角標も、てんでに域をつくやうに、ちらちらゆれたり顫へたりしました。
      「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た。」ジョバンニは呟きました。「けれども僕は、ずうっと前から、ここでねむってゐたのではなかったらうか。ぼくは決して、こんな野原を歩いて来たのではない。途中のことを考へ出さうとしても、なんにもないんだから。」
      ところが、ふと気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗ってゐる小さな列車が列車が走り続けてゐたのでした。ほんたうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座ってゐたのです。車室の中には、青い天鷲絨を張った腰掛けが、まるでがら明きで、ほんの六七人の、アラビヤ風のゆるい着物を着た人たちが、眼鏡を治したり、何か本を読んだりしてゐるだけ、向ふの鼠いろのワニスを塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光ってゐるのでした。
      ところが、ジョバンニは眼を自分の近くに戻して、ふとじぶんのすぐ前の席に、ぬれたやうにまっ黒な上着を着た、せいの高い子供が、窓から頭を出して外をみてゐるのに気が付きました。そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるやうな気がして、さう思ふと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔をださうとしたとき、俄かにその子供があまたを引っ込めて、こっちを見ました。
      それは級長のカムパネルラだったのです、
      (あゝ、さうだ。カムパネルラだ。ぼくはカムパネルラといっしょに旅をしてゐたのだ。)ジョバンニが思った時、カムパネルラが云ひました。
      「ザネリはね、ずゐぶん走ったけれども、乗り遅れたよ。銀河ステーションの時計はよほど進んでゐるねえ。」
      ジョバンニは、(さうだ、ぼくたちはいま、いっしょにさそって出掛けたのだ。)とおもひながら、
      「次の停車場で下りて、ザネリを来るのを待ってゐようか。」と云ひました。
      「ザネリ、もう帰ったよ。お父さんが迎ひにきたんだ。」
      カムパネルラは、なぜかさう云ひながら、少し顔いろが青ざめて、どこか苦しいとふふうでした。するとジョバンニも、なんだかどこかに、何か忘れたか済まないことがしてあるといふやうな、をかしな気持ちがしてだまってしまひました。
      ところがカムパネルラは、窓から外を覗きながら、もうすっかり元気が直って、勢よく云ひました。
      「あゝしまった。ぼく、水筒を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構はない。もうぢき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんたうにすきだ。川の遠くを飛んでゐたって、ぼくきっと見える。」そしてカムパネルラは、円い板のやうになった地図を、しきりにぐるぐるまはして見てゐました。まったくその中に、白くあらはされた天の川の左の岸に沿って一条の鉄道線の上に、一一の停車場や三角標、泉水や森が、青や橙や緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。ジョバンニはなんだかその地図をどこからで見たやうにおもひました。
      「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」
      ジョバンニが云ひました。
      「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらはなかったの。」
      ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北を指しました。
      「さうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」
      そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすゝきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆれてうごいていて、波を立ててゐるのでした。
      「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ。」ジョバンニは云ひながら、まるではね上りたいくらゐ愉快になって、足をことこと鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きました。
      「ぼくたち、どこまで行くんだったらう。」ジョバンニはふと天の川のこっちに、大きな一つのからな小屋が建ち、そこから滑車や網がたくさんぶらさがってゐるのを見ながら、カムパネルラにききました。
      「どこまでも行くんだらう。」カムパネルラはぼんやり答へました。
      「この汽車石炭たいてゐないねえ。」ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながら云ひました。
      「石炭たいてゐない?電気だらう。」
      そのとき、あのなつかしいセロのしづかな声がしました。
      「ここの汽車は、スティームや電気でうごいてゐない。ただうごくやうにきまってゐるからうごいてゐるのだ。」
      「あの声、ぼくなんべんもどこかできいた。」
      「ぼくだって、林の中や川で、何べんも聞いた。」
      ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、そらのすゝきの風にひるがへる中を、天の川の水や、三角点の青白い燐光の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
      向ふの席で、灰いろのひだの、長く垂れたきものを着たひとが、ちょっと立ちあがって、そのえりを直しただけ、ほんたうにそこらはしづかなのでした。
      「あゝ、りんだうの花が咲いてゐる。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指差して云いました。
      線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石でも刻まれたやうな、素晴らしい紫のりんだうの花が咲いてゐました。
      「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」ジョバンニは胸を躍らせて云ひました。
      「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
      カムパネルラが、さう云ってしまふかしまはないうち、次のりんだうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
      と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな底をもったりんだうの花のコップが、湧くやうに、雨のやうに、眼の前を通り、三角標を通り、三角標の列は、けむるやうに燃えるやうに、いよいよ光って立ったのです。

      ·

      第四稿(最终版)

      六、銀河ステーション

      そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないようになり、濃い鋼青のそらの野原にたちました。いま新らしく灼いたばかりの青い鋼の板のような、そらの野原に、まっすぐにすきっと立ったのです。
      するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと獲れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦ってしまいました。
      気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小さな列車が走りつづけていたのでした。ほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。車室の中は、青い天蚕絨を張った腰掛けが、まるでがら明きで、向うの鼠いろのワニスを塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光っているのでした。
      すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、せいの高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付きました。そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔を出そうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。
      それはカムパネルラだったのです。
      ジョバンニが、カムパネルラ、きみは前からここに居たのと云おうと思ったとき、カムパネルラが
      「みんなはねずいぶん走ったけれども遅れてしまったよ。ザネリもね、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」と云いました。
      ジョバンニは、(そうだ、ぼくたちはいま、いっしょにさそって出掛けたのだ。)とおもいながら、
      「どこかで待っていようか」と云いました。するとカムパネルラは
      「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎いにきたんだ。」
      カムパネルラは、なぜかそう云いながら、少し顔いろが青ざめて、どこか苦しいというふうでした。するとジョバンニも、なんだかどこかに、何か忘れたものがあるというような、おかしな気持ちがしてだまってしまいました。
      ところがカムパネルラは、窓から外をのぞきながら、もうすっかり元気が直って、勢よく云いました。
      「ああしまった。ぼく、水筒を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構わない。もうじき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川の遠くを飛んでいたって、ぼくはきっと見える。」そして、カムパネルラは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見ていました。まったくその中に、白くあらわされた天の川の左の岸に沿って一条の鉄道線路が、南へ南へとたどって行くのでした。そしてその地図の立派なことは、夜のようにまっ黒な盤の上に、一一の停車場や三角標、泉水や森が、青や橙や緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。ジョバンニはなんだかその地図をどこかで見たようにおもいました。
      「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」
      ジョバンニが云いました。
      「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」
      「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」
      ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北を指しました。
      「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」
      そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。
      「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ。」ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら一生けん命延びあがって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄いろではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、或いは三角形、或いは四辺形、あるいは電や鎖の形、さまざまにならんで、野原いっぱい光っているのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。するとほんとうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかがやく三角標も、てんでに息をつくように、ちらちらゆれたり顫えたりしました。
      「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た。」ジョバンニは云いました。
      「それにこの汽車石炭をたいていないねえ。」ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながら云いました。
      「アルコールか電気だろう。」カムパネルラが云いました。
      ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、そらのすすきの風にひるがえる中を、天の川の水や、三角点の青じろい微光の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
      「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして云いました。
      線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
      「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」ジョバンニは胸を躍らせて云いました。
      「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
      カムパネルラが、そう云ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
      と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな底をもったりんどうの花のコップが、湧くように、雨のように、眼の前を通り、三角標の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです。

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