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12、十二 我忍不住了 ...
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在冷清的大森家里,滨田、熊谷、和他们的朋友——主要是在舞蹈会认识的男士们,开始频繁地出入。
他们大概是傍晚时来。我从公司回来后,大家会一起放留声机跳舞。因为娜奥米热情好客,家里也没有拘束的佣人或者老人,再加上是在画室里跳舞,所以他们常常玩得忘记了时间。
刚开始还有些顾虑,说到了吃晚饭的时间就回去。
“等等!为什么要回去啊!一起去吃饭吧!”
由于娜奥米的极力挽留,每次到最后都必去“大森亭”吃洋食,请他们吃晚饭也成了惯例。
那是一个入梅季节的潮湿夜晚。
浜田和熊谷来玩,一直聊到十一点多,外面风雨交加,雨点哗哗地打在玻璃窗上,两个人一边说着“回去吧回去吧”,一边又踌躇不已。
“天气真是糟糕,这样下去你们也回不去了,索性今晚就在这里过夜吧。”娜奥米突然这么说,“喂,不行吗?住这里——阿麻当然可以的吧?”
“嗯,我无所谓,不过……如果滨田要回去,我也回去吧。”
“滨先生也不在乎的!对吧,滨先生。”娜奥米看了看我的脸色,“可以吗,浜先生,完全不用客气。如果在冬天被褥可能会不够,但现在有四个人啊。再说,明天是星期天,让治先生也在家,再怎么睡懒觉也没关系。”
“怎么样,不住下吗?这雨下得可真够呛。”我无可奈何,也劝他。
“呐,就这样吧?明天再找个地方玩吧,对了,傍晚可以去花月园!”
最后两人住了下来。
“对了,蚊帐该怎么办呢?”我说。
“既然蚊帐只有一顶,那大家一起睡好了,这样不是更有趣吗?”娜奥米说。
她像是去修学旅行似的雀跃,这个样子的她太少见了。
这让我感到意外。我本来打算把蚊帐让给那两人,我和娜奥米睡到画室的沙发上,再点蚊香过夜就可以了。像是四个人挤在一个房间里一起睡觉这种事情,我想都没想过。
但是,娜奥米乐意,这两个人也没有露出讨厌的表情……我还在一如既往地犹豫不决的时候,她很快就作出了决定:“好了,来铺被子,你们三个也请帮下忙!”
她站起来,一边发号施令,一边爬上阁楼的四叠半房间。
我考虑着被褥该怎么排序:因为蚊帐太小,四个人不可能并排摆放枕头。
最后想来想去,决定三人并行,一人与之成直角。
“呐,这样就好了吧?你们三个男人并排睡在那里,我一个人睡这边。”娜奥米说。
“呀,这可不得了啊。”吊好蚊帐后,熊谷看着里面说。
“这样像豚小屋,大家都乱成一团了。”
“乱成一团又怎么了?不要想得太奢侈。”
“哼!你在别人家还乱添麻烦吗?”
“当然啦,反正今晚又不会真的睡着。”
“我要睡觉了哟,呼噜呼噜地打鼾。”
熊谷衣服都没脱就率先钻了进去,“咚”地一声把地面振响。
“睡觉?不能睡——滨先生,你可不能让阿麻睡着,睡了就挠他痒痒——”
“啊,好闷热,这里完全睡不着啊——”
熊谷躺在正中央的被子上翘着腿,在他的右边是穿着洋服的浜田,他只穿着睡裤和贴身衬衫,消瘦的身体仰面朝天,吸着肚子。滨田似乎正静静地听着外面的雨声,一只手放在额头上,另一只手啪嗒啪嗒地打着团扇,只不过发出的声音更让人觉得闷热。
“怎么搞的,只要有女人在我旁边,我就睡不安稳。”
“我是男人哟,不是女人,滨先生不是说过吗?我感觉不像是女人。”
娜奥米在蚊帐外面迅速换上睡衣,一片昏暗间,隐约能看见她雪白的后背。
“我是说过,不过……”
“……睡在身边,还是觉得像个女人?”
“嘛,就是这个感觉吧。”
“那阿麻呢?”
“我才不在乎呢?你可算不上女人!”
“不算女人,那是什么?”
“嗯呜……你是海豹。”
“啊哈哈哈哈,海豹和猴子哪个好?”
“我哪个都敬谢不敏啊!”
熊谷故意发出困倦的声音。
我躺在熊谷的左边,默默地听着那三个人的侈侈不休。
娜奥米进来的时候,头会朝向浜田一边呢,还是我这边呢?我心里很在意这个。这么想的原因是娜奥米的枕头放在不偏向任何一方的位置上。总觉得刚才铺被子的时候,她是故意这么做的,以便之后的出入。
娜奥米换上了一件桃色的绉纱睡裙,走了进来。
“关灯?”她站着问。
“帮我关掉吧……”传来熊谷的声音。
“那关灯了哟……”
“啊,好痛!”
熊谷话音刚起,娜奥米就突然跳上他的胸膛,踩着男人的身体,从蚊帐里啪地一声关掉了开关。
天色变暗,外面电线杆上的街灯亮起,灯芒照在玻璃窗上,映得房间里朦朦胧胧,彼此的面孔和衣服依稀可辨。
娜奥米跨过熊谷的头,往自己的被子上跳去的那一瞬间,睡衣的下摆吹来一阵凉风,挑动着我的鼻子。
“阿麻,要不要来抽支烟?”
娜奥米并没有马上睡觉,而是像个男人一样张开双腿坐在枕头上,从上面俯视着熊谷。
“要,向这边扔过来!”
“畜生!都不让我眯一会啊。”
“呵呵!哟,朝这边看!你不朝这边看,我就要欺负你了!”
“啊,好痛!住手、住手、住手啊!我是活物,请稍微慎重点对待!被踩在脚下踢,再结实也受不了的!”
“哈哈哈哈!”
我无神地盯着蚊帐顶,娜奥米似乎在用脚尖踩着男人的头。
“真没办法啊。”熊谷说着,然后翻了个身。
“阿麻,一直没睡吗?”听到了滨田的声音。
“啊,一直没睡,被大肆迫害着呢。”
“滨先生,你也转过身来吧,不然我再迫害你。”
滨田接着翻了个身,变为趴着。
与此同时,那边传来熊谷在衣袖里摸索火柴的声音。然后,“啪”地一声划着火柴,我的眼前闪过亮光。
“让治先生,不如你也转过来?你一个人在干什么?”
“嗯、嗯……”
“怎么了,困了吗?”
“嗯、嗯……有点迷糊了……”
“哈哈哈哈,说得倒巧,你是故意装睡的吧?呐,对不对?你不就是不安心吗?”
我被击中了要害,尽管闭上了眼睛,但还是感觉脸红了。
“不用担心我的,我们只是这样吵闹而已,所以你可以安心地睡觉……或者,如果你真的心烦意乱的话,就转过来看看吧?不要硬忍……”
“还是想被迫害吧?”这句话是在熊谷说的,他点上一支烟,利落地吸上一口。
“不要呀!这个人就算迫害也没意思了,每天都在玩。”
“多谢款待啊。”
滨田的这番话,并不是发自内心的,只不过是对我的一种恭维。
“呐,让治先生——如果你想被迫害的话,我可以帮你。”
“不,够了。”
“如果够了的话,就转向我吧!像这样,只有你一个人被孤立,不觉得奇怪吗?”
我骨碌地转过身,把下巴搁在枕头上。
娜奥米半跪半坐,两腿成“八”字张开,一只脚放在滨田的鼻尖前,另一只放在我的鼻尖上。还有那个叫熊谷的家伙,他的脑袋就插在“八”字之间,悠然地抽着“敷岛”牌子的香烟。
“怎么样?让治先生,这副光景?”
“嗯……”
“嗯是什么意思?”
“哑口无言的意思。不愧是海豹,无疑了。”
“是啊,海豹,现在海豹正在冰面上休息,而且前面躺着的三只都是男海豹。”
头顶垂下葱绿的蚊帐,像低低的密云笼罩……夜色中乌发亦黑,解开青丝,白玉颜若隐若现……散乱的睡裙下,裸露的胸与臂、丰腴的小腿肚……
这个模样,是娜奥米经常用这个来诱惑我的pose之一。一旦我看到这样的姿势,就不由得化身为被扔了饵食的野兽。昏暗中,我能清楚地感知到,娜奥米用那副惯有的表情引诱着我,眼睛里带着不怀好意的微笑,直直地俯视。
“哑口无言什么的都是骗人的。他受不了我穿睡裙,今天晚上大家都在,忍着呢。呐,让治先生,我说中了吧?”
“别胡说八道!”
“哈哈哈哈,太嚣张了,我一定要让你投降!”
“喂!喂!稍微节制一下!这种事拜托你明天晚上再做吧!”
“赞成!”滨田也跟着熊谷附和,“今晚要对大家公平啊。”
“我很公平,不是吗?为了不遭人怨恨,我向滨先生那边伸出了脚,也向让治先生那边伸出了脚……”
“那我呢?”
“阿麻是最幸运的,最靠近我身边,脑袋都放到这个地方了。”
“真是光荣至极!”
“是啊,你是最被优待的。”
“可是,你总不能一整晚都这样吧。到底要怎样睡觉?”
“头该转向哪边呢?滨先生,还是让治先生?没想好啊。”
“什么头该转向哪边?这不是个难题吧。”
“不,不是的这样的。阿麻在中间当然很好,但对我来说就是个问题了。”
“是吗,滨先生?那就把你的脑袋放到这里吧。”
“所以那家伙才是问题所在——她把头转向这边河合先生会担心,但她转向河合先生,我心里又觉得不舒服……”
“而且,这个女人的睡姿不好。”熊谷又插嘴道,“要是不小心的话,半夜里有可能会被她一脚踢飞。”
“是吗?河合先生,她的睡相真的不好吗?”
“是啊,不好,而且还不是一般的不好。”
“喂,滨田。”
“嗯?”
“装睡□□底呢。”熊谷咯咯地笑。
“□□有什么不好?让治先生总是说,脚比脸更可爱。”
“那是一种恋物癖。”
“说得也是,呐,让治先生,是这样的吗?你就是更喜欢脚吧?”
然后,娜奥米说着“不公平就不好了”,一会儿把脚转向我,一会儿又转向滨田,每隔五分钟左右,她就在被子上换一次方向。
“好了,这次轮到滨先生了!”
说着,她一边睡觉一边一圈圈地转动着身体,在转动的过程中,她时而抬起两腿,把蚊帐顶踢飞,时而把枕头从对面的一头扔向这边的一头。
或许是因为海豹的活动过于激烈,本就露出一半棉被的蚊帐下摆被掀开了,好几只蚊子飞了进来。
“糟糕,好多蚊子。”熊谷气呼呼地爬起来,开始驱蚊。不知是谁踩到了蚊帐,吊绳被踩断掉下来。在这掉落的过程中,娜奥米更是胡闹。修好吊绳,重新吊起蚊帐,又花了很长的时间。
骚乱后好不容易稍微安静了一些,却已是东方泛白的时分了。
雨声、风声、睡在旁边的熊谷的鼾声……我听着听着,不知不觉间眯着了,可稍有动静又醒了过来。
毕竟这个房间连两个人一起睡都觉得狭窄,而且空气中还弥漫着娜奥米的肌肤和衣服上的甘香和汗味,仿佛在发酵。再加上今晚又多了两个大男人,更让人受不了,封闭的房间里闷热得让人几乎窒息,仿佛发生了地震。
熊谷不时翻个身,黏糊糊、汗津津的手和膝盖互相滑溜溜地蹭着。再看看娜奥米,枕头虽然在我这边,但是一只脚搁在枕头上,另一只脚却撑起来,脚背伸到我的被子下面,而头歪向了浜田那边,两只手大大地张开。即使是疯姑娘也累了吧?做了个好梦。
“娜奥米酱……”
我口中这么叫着,耳中听着大家平稳的鼾声,手里抚摸着她伸进我被子下的脚。
啊,这脚,这只酣睡的雪白的美丽的脚,的确是我的。从她还是小姑娘的时候起,我就每天晚上都把它放进热水里,用肥皂给它洗过,啊,那皮肤真软——从十五岁开始,她的身体就开始飞速长高了,只有这只脚却像没有发育一样,依然娇小可爱。
对了,这拇趾也和那时一样。小趾的形状、足跟的圆润、隆起的脚背肉鼓鼓,全部都和那时的样子一般无二,不是吗……我忍不住了,不禁把自己的嘴唇轻轻地贴近了她的脚背。
天亮后,我似乎又迷迷糊糊地睡着了,不久,一阵哄堂大笑把我吵醒。一看,是娜奥米把纸捻①伸进了我的鼻孔里。
“怎样?让治先生,醒了吗?”
“啊,已经几点了?”
“都十点半了,不过就算起床也没事做,你不如再睡一觉吧。”
雨停了,星期天的天空晴空万里,但房间里还残留着人潮的闷热。
·
注:
①纸捻:也叫纸媒。用易于引火的纸搓成的细纸卷,点着后一吹即燃,用以点火或吸水烟。
·
閑散であった大森の家には、浜田や、熊谷や、彼等の友達や、主として舞蹈会で近づきになった男たちが、追い追い頻繁に出入りするようになりました。
やって来るのは大概夕方、私が会社から戻る時分で、それからみんなで蓄音機をかけてダンスをやります。ナミが客好きであるところへ、気兼ねをするような奉公人や年寄は居ず、おまけに此処のアトリエはダンスに持って来いでしたから、彼等は時の移るのを忘れて遊んで行きます。始めのうちはいくらか遠慮して、飯時になれば帰ると云ったものですが、「ちょいと! どうして帰るのよ! 御飯をたべていらっしゃいよ」と、ナミが無理に引き止めるので、しまいにはもう、来れば必ず「大森亭」の洋食を取って、晩飯を馳走するのが例のようになりました。
じめじめとした入梅の季節の、或る晩のことでした。浜田と熊谷が遊びに来て、十一時過ぎまでしゃべっていましたが、外は非常な吹き降りになり、雨がざあざあガラス窓へ打ちつけて来るので、二人とも「帰ろう帰ろう」と云いながら、暫く躊躇していると、
「まあ、大変なお天気だ、これじゃあとても帰れないから、今夜は泊っていらっしゃいよ」
と、ナミがふいとそう云いました。
「ねえ、いいじゃないの、泊ったって。―――まアちゃんは無論いいんだろう?」
「うん、己アどうでもいいんだけれど、………浜田が帰るなら己も帰ろう」
「浜さんだって構やしないわよ、ねえ、浜さん」
そう云ってナミは私の顔色を窺って、
「いいのよ、浜さん、ちっとも遠慮することはないのよ、冬だと布団が足りないけれど、今なら四人ぐらいどうにかなるわ。それに明日は日曜だから、譲治さんも内にいるし、いくら寝坊してもいいことよ」
「どうです、泊って行きませんか、全くこの雨じゃ大変だから」と、私も仕方なしに勧めました。
「ね、そうなさいよ、そして明日は又何かして遊ぼうじゃないの、そう、そう、夕方から花月園へ行ってもいいわ」
結局二人は泊ることになりましたが、「ところで蚊帳はどうしようね」
と、私が云うと、「蚊帳は一つしかないんだから、みんな一緒に寝ればいいわよ。その方が面白いじゃないの」
と、そんな事がひどくナミには珍しいのか、修学旅行にでも行ったように、きゃっきゃっと喜びながら云うのでした。
これは私には意外でした。蚊帳は二人に提供して、私とナミとは蚊やり線香でも焚きながら、アトリエのソファで夜を明かしても済むことだと考えていたので、四人が一つ部屋の中へごろごろかたまって寝ようなどとは、思い設けてもいませんでした。が、ナミがその気になっているし、二人に対してイヤな顔をするでもないし、………と、例の通り私がぐずぐずしているうちに、彼女はさっさと極めてしまって、「さあ、布団を敷くから三人とも手伝って頂戴」と、先に立って号令しながら、屋根裏の四畳半へ上って行きました。
布団の順序はどう云う風にするのかと思うと、何分蚊帳が小さいので、四人が一列に枕を並べる訳には行かない。それで三人が並行になり、一人がそれと直角になる。
「ね、こうしたらいいじゃないの。男の人が三人そこへお並びなさいよ、あたし此方へ独りで寝るわ」
と、ナミが云います。
「やあ、えれえ事になっちゃったな」
蚊帳が吊れると、熊谷は中を透かして見ながらそう云いました。
「これじゃあどうしても豚小屋だぜ、みんなごちゃごちゃになっちまうぜ」
「ごちゃごちゃだっていいじゃないか、贅沢なことを云うもんじゃないわ」
「ふん! 人様の家に御厄介になりながらか」
「当り前さ、どうせ今夜はほんとに寝られやしないんだから」
「己あ寝るよ、グウグウ鼾をかいて寝るよ」
どしんと熊谷は地響を立てて、着物のまんま真っ先にもぐり込みました。
「寝ようッたって寝かしゃしないわよ。―――浜さん、まアちゃんを寝かしちゃ駄目よ、寝そうになったら擽ぐってやるのよ。―――」
「ああ蒸し暑い、とてもこれじゃ寝られやしないよ。―――」
まん中の布団にふん反り返って膝を立てている熊谷の右側に、洋服の浜田はズボンと下着のシャツ一枚で、痩せた体を仰向けに、ぺこんと腹を凹ましていました。そして静かに戸外の雨を聞き澄ましてでもいるように、片手を額の上に載せて、片手でばたばたと団扇を使っている音が、一層暑苦しそうでした。
「それに何だよ、僕ア女の人がいると、どうもおちおち寝られないような気がするよ」
「あたしは男よ、女じゃないわよ、浜さんだって女のような気がしないって云ったじゃないか」
蚊帳の外の、うす暗い所で、ぱっと寝間着に着換える時ナミの白い背中が見えました。
「そりゃ、云ったことは云ったけれど、………」
「………やっぱり傍へ寝られると、女のような気がするのかい?」
「ああ、まあそうだな」
「じゃ、まアちゃんは?」
「己ア平気さ、お前なんか女の数に入れちゃあいねえさ」
「女でなけりゃ何なのよ?」
「うむ、まあお前は海豹だな」
「あはははは、海豹と猿と孰方がいい?」
「孰方も己あ御免だよ」
と、熊谷はわざと眠そうな声を出しました。私は熊谷の左側に寝ころびながら、三人がしきりにべちゃくちゃ云うのを黙って聞いていましたが、ナミが此処へ這入って来ると、浜田の方か、私の方か、いずれ孰方かへ頭を向けなければならないのだが、と、内々それを気にしていました。と云うのは、ナミの枕が孰方つかずに、曖昧な位置に放り出してあったからです。何でもさっき布団を敷く時に、彼女はわざとそう云う風に、あとでどうでもなるように置いたのじゃないかと思われました。と、ナミは桃色の縮みのガウンに着換えてしまうと、やがて這入って来て衝っ立ちながら、
「電気を消す?」
と、そう云いました。
「ああ、消して貰いてえ、………」
そう云う熊谷の声がしました。
「じゃあ消すわよ。………」
「あ、痛え!」
と、熊谷が云ったとたんに、いきなりナミはその胸に飛び上って、男の体を蹈み台にして、蚊帳の中からパチリとスイッチを切りました。
暗くはなったが、表の電信柱にある街燈の灯先が窓ガラスに映っているので、部屋の中はお互の顔や着物が見分けられるほどもやもやと明るく、ナミが熊谷の首を跨いで、自分の布団へ飛び降りた刹那の、寝間着の裾のさっとはだけた風の勢が私の鼻を嬲りました。
「まアちゃん、一服煙草を吸わない?」
ナミは直ぐに寝ようとはしないで、男のように股を開いて枕の上にどっかと腰かけ、上から熊谷を見おろしながら云うのでした。
「よう! 此方をお向きよ!」
「畜生、どうしても己を寝かさねえ算段だな」
「うふふふふ、よう! 此方をお向きよ! 向かなけりゃいじめてやるよ」
「あ、いてえ! よせ、止せ、止せッたら! 生き物だから少し鄭重にしてくんねえ、蹈み台にされたり蹴られたりしちゃ、いくら頑丈でもたまらねえや」
「うふふふふ」
私は蚊帳の天井を見ているのでハッキリ分りませんでしたが、ナミは足の爪先で男の頭をグイグイ押したものらしく、「仕方がねえな」と云いながら、やがて熊谷は寝返りを打ちました。
「まアちゃん、起きたのかい?」
そう云う浜田の声がしました。
「ああ、起きちゃったよ、盛んに迫害されるんでね」
「浜さん、あんたも此方をお向きよ、でなけりゃ迫害してやるわよ」
浜田はつづいて寝返りを打って、腹這いになったようでした。
同時に熊谷がガチャガチャと袂の中からマッチを捜り出す音がしました。そしてマッチを擦ったので、ぼうッと私の眼瞼の上に明りが来ました。
「譲治さん、あなたも此方を向いたらどう?独りで何をしているのよ」
「う、うん、………」
「どうしたの、眠いの?」
「う、うん………少しとろとろしかけたところだ、………」
「うふふふふ、巧く云ってらア、わざと寝たふりをしてるんじゃないの、ねえ、そうじゃない?気が揉めやしない?」
私は図星を指されたので、眼をつぶってはいましたけれど、顔が真っ赤になったような気がしました。
「あたし大丈夫よ、ただこうやって騒いでるだけよ、だから安心して寝てもいいわ。………それともほんとに気が揉めるなら、ちょっと此方を見てみない?何も痩せ我慢しないだって、―――」
「やっぱり迫害されたいんじゃないかね」
そう云ったのは熊谷で、煙草に火をつけて、すぱッと口を鳴らしながら吸い出しました。
「いやよ! こんな人を迫害したって仕様がないわよ、毎日してやっているんだもの」
「御馳走様だなア」
と浜田の云ったのが、心からそう云ったのでなく、私に対する一種のお世辞のようにしか取れませんでした。
「ねえ、譲治さん、―――だけれど、迫害されたいんならして上げようか」
「いや、沢山だよ」
「沢山ならあたしの方をお向きなさいよ、そんな、一人だけ仲間外れをしているなんて妙じゃないの」
私はぐるりと向き直って、枕の上へ頤を載せました。と、立て膝をして両脛を八の字に蹈ん張っているナミの足の、一方は浜田の鼻先に、一方は私の鼻先にあるのです。そして熊谷はと云うと、その八の字の間へ首を突っ込んで、悠々と敷島を吹かしています。
「どう?譲治さん、この光景は?」
「うん、………」
「うんとは何よ」
「呆れたもんだね、まさに海豹に違いないね」
「ええ、海豹よ、今海豹が氷の上で休んでるところよ。前に三匹寝ているのも、これも男の海豹よ」
低く密雲の閉ざすように、頭の上に垂れ下がっている萌黄の蚊帳、………夜目にも黒く、長々と解いた髪の毛の中の白い顔、………しどけないガウンの、ところどころに露われている胸や、腕や、膨らッ脛や、………この恰好は、ナミがいつもこれで私を誘惑するポーズの一つで、こう云う姿を見せられると私はあたかも餌を投げられた獣のようにさせられるのです。私は明かに、ナミが例のそそのかすような表情をして、意地の悪い眼で微笑しながら、じっと此方を見おろしているのを、うす暗い中で感じました。
「呆れたなんて嘘なのよ。あたしにガウンを着られるとたまらないッて云う癖に、今夜はみんなが居るもんだから我慢してるのよ。ねえ、譲治さん、中ったでしょう」
「馬鹿を云うなよ」
「うふふふふ、そんなに威張るなら、降参させてやろうか」
「おい、おい、ちと穏やかでねえね、そう云う話は明日の晩に願いてえね」
「賛成!」
と、浜田も熊谷の尾に附いて云って、
「今夜はみんな公平にして貰いたいなア」
「だから公平にしてるじゃないの。恨みッこがないように、浜さんの方へは此方の足を出しているし、譲治さんの方へは此方を出してるし、―――」
「そうして己はどうなんだい?」
「まアちゃんは一番得をしてるわよ、一番あたしの傍にいて、こんな所へ首を突ン出してるじゃないの」
「大いに光栄の至りだね」
「そうよ、あんたが一番優待よ」
「だがお前、まさかそうして一と晩じゅう起きてる訳じゃねえだろう。一体寝る時はどうなるんだい?」
「さあ、どうしようか、孰方へ頭を向けようか。浜さんにしようか、譲治さんにしようか」
「そんな頭は孰方へ向けたって、格別問題になりやしねえよ」
「いや、そうでないよ、まアちゃんはまん中だからいいが、僕に取っちゃ問題だよ」
「そう?浜さん、じゃ、浜さんの方を頭にしようか」
「だからそいつが問題なんだよ、此方へ頭を向けられても心配だし、そうかと云って河合さんの方へ向けられても、やっぱり何だか気が揉めるし、………」
「それに、この女は寝像が悪いぜ」
と、熊谷が又口を挟んで、
「用心しないと、足を向けられた方の奴は夜中に蹴ッ飛ばされるかも知れんぜ」
「どうですか河合さん、ほんとに寝像が悪いですか」
「ええ、悪いですよ、それも一と通りじゃありませんよ」
「おい、浜田」
「ええ?」
「寝惚けて足の裏を舐めたってね」
そう云って熊谷がゲラゲラ笑いました。
「足を舐めたっていいじゃないの。譲治さんなんか始終だわよ、顔より足の方が可愛いくらいだって云うんだもの」
「そいつあ一種の拝物教だね」
「だってそうなのよ、ねえ、譲治さん、そうじゃなかった? あなたは実は足の方が好きなんだわね?」
それからナミは、「公平にしなけりゃ悪い」と云って、私の方へ足を向けたり、浜田の方へ向け変えたり、五分おきぐらいに、何度も何度も布団の上を彼方此方へ寝そべりました。
「さあ、今度は浜さんが足の番!」
と云って、寝ながら体をぶん廻しのようにぐるぐる廻したり、廻す拍子に両脚を上げて蚊帳の天井を蹴っ飛ばしたり、向うの端から此方の端へぽんと枕を投げつけたりする。その海豹の活躍ぶりが激しいので、それでなくても布団の半分はみ出している蚊帳の裾がぱっぱっとめくれて、蚊が幾匹も舞い込んで来る。「此奴あいけねえ、大変な蚊だ」と、熊谷がムックリ起き上って、蚊退治を始める。誰かが蚊帳を蹈んづけて、釣り手を切って落してしまう。その落ちた中でナミが一層ばたばたと暴れる。釣り手を繕って、蚊帳を吊り直すのに又長いこと時間がかかる。そんな騒ぎで、やっといくらか落ち着いたような気がしたのは、東の方が明るみかけた時分でした。
雨の音、風の響き、隣りに寝ている熊谷の鼾、………私はそれが耳について、ついとろとろとしたかと思うと、ややともすれば眼がさめました。一体この部屋は二人で寝てさえ狭苦しい上に、ナミの肌や着物にこびりついている甘い香と汗の匂とが、醗酵したように籠っている。そこへ今夜は大の男が二人も余計殖えたのですから、尚更たまらない人いきれがして、密閉された壁の中は、何だか地震でもありそうな、息の詰まるような蒸し暑さでした。ときどき熊谷が寝返りを打つと、べっとり汗ばんだ手だの膝だのが互にぬるぬると触りました。ナミはと見ると、枕は私の方にありながら、その枕へ片足を載せ、一方の膝を立てて、その足の甲を私の布団の下へ突っ込み、首を浜田の方へかしげて、両手は一杯にひらいたまま、さすがのお転婆もくたびれたものか、好い心持そうに眠っています。
「ナミちゃん………」
と、私はみんなの静かな寝息をうかがいながら、口のうちでそう云って、私の布団の下にある彼女の足を撫でてみました。ああこの足、このすやすやと眠っている真っ白な美しい足、これはたしかに己の物だ、己はこの足を、彼女が小娘の時分から、毎晩々々お湯へ入れてシャボンで洗ってやったのだ、そしてまあこの皮膚の柔かさは、―――十五の歳から彼女の体は、ずんずん伸びて行ったけれど、この足だけはまるで発達しないかのように依然として小さく可愛い。そうだ、この拇趾もあの時の通りだ。小趾の形も、踵の円味も、ふくれた甲の肉の盛り上りも、総べてあの時の通りじゃないか。………私は覚えず、その足の甲へそうッと自分の唇をつけずにはいられませんでした。
夜が明けてから、私は再びうとうととしたようでしたが、やがてどっと云う笑い声に眼がさめて見ると、ナミが私の鼻の孔へかんじよりを突っ込んでいました。
「どうした?譲治さん、眼がさめた?」
「ああ、もう何時だね」
「もう十時半よ、だけど起きたって仕様がないからどんが鳴るまで寝ていようじゃないの」
雨が止んで、日曜日の空は青々と晴れていましたが、部屋の中にはまだ人いきれが残っていました。