晋江文学城
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4、4 ...

  •   松岡は海藤からこぼれ落ちた輩を、それとは知らせず飼い殺しにしていた。そして、それを手駒にして遊んでやろうと考えた。単なるスクープへの憂さ晴らしのつもりだった。
      松岡の手の内にそれらを取り込む気は元々ない。規律の違う組織の人間は、取り込んでも邪魔者だ。それなら、相手に投げ返して冷や飯食いを始末するだけだ。

      その夜、海藤から1年前に抜けた男が、内縁の妻が仕切っていたスナックで人を刺した。刺されたのは、内縁の妻の新しい男と目されていた海藤の1人。
      運良く一命は取りとめたものの、重態だった。
      1時間もせずにその報告は秋芳にもたらされた。深夜と言うよりは明け方に近い時間だった。明るくなってから報告を受けていたら、報告した人間を怒鳴っていただろう。「遅い」と。
      情報は勝負を左右する。急ぐべきことか猶予を持っても良いものかどうかは自分で判断する、と言い渡してあった。

      「探せ」
      秋芳の返事はその一言。

      半日もせずに刺した男が海藤に連れてこられた。
      だいぶ抵抗したと見えて、服はボロボロだったが、どこも折れていないし、殴られたような跡もない。秋芳は暴力の使い分けについてもこれまた厳しく言い渡してあった。

      「自首するか? それとも通報されたいか?」
      電話を手にした秋芳が聞く。
      「・・・」
      「沢井」
      「はい」
      「電話しろ」
      「はい」
      沢井と呼ばれた男は秋芳の後ろに控えていた。
      秋芳よりやや若い。秋芳と同じようなダークスーツに身を包み、フレームレスの眼鏡の奥で冷ややかな表情を崩さない、無表情な男。3年前から秋芳のビジネスのアシストをしている。
      沢井が携帯で110を押した瞬間、
      「自首する・・・」と男が呟いた。
      「なぜ?」
      すすめておきながら問う秋芳。
      「アンタは俺を見せしめにしなかった・・・からだ」
      「ほう?期待に添えなくて悪かったね。」
      「そうではない・・・ただ・・・」
      「ただ?」
      「そうなれば、海藤は一気にあっちこっちで火が吹いたはずだったからだ」
      「そういう手筈でしたか」
      「よくわからん。俺は・・・俺には・・・あの女には子供がいる。子供の面倒を見ると約束されたんだ。」
      秋芳も沢井も男がナニを指して言っているのかわかり過ぎるほどわかっていた。

      秋芳はため息と共に一言囁いた。
      「深幸が何とかする。安心しろ。」
      秋芳は間違っても自分が何とかする、とは言わなかった。
      女たちのことは全て深幸の管轄だ。
      男もわかっていた。
      そのまま元仲間に連れられて警察署に向かった。

      「また深幸に怒られる・・・」
      秋芳がボソッと呟いた一言は、沢井の耳にだけ届いた。

      小さな諍いはその後も数件あったが、マスコミの耳目が集中したことで、それらはすぐさま下火になった。
      下火にせざるを得なくなった・・・松岡が・・・
      世間の注目が集まりすぎる。せいぜいいくつかの記事が出て、最後にはしがない週刊誌の暴露記事で終わるという期待は、熱くなる報道で軌道修正を余儀なくされた。
      それが海藤の仕組んだメディア戦略であったとは微塵も思考が及ばなかった。その浅慮が松岡の、ひいては朝比奈の末路に繋がるとは、この時点ではわかりようもなかった。

      熱海は、今度はメディアの巣窟となった。
      誰がいつどこで何をするのか、誰も知らないものがいないくらい、情報がどんどん日の光の元に晒される。

      最初のスクープから3日後、テレビ各局で熱海乗っ取りが取り上げられたその日、秋芳は菩提寺でもある円勝寺の奥座敷にいた。
      対するのは、秋芳よりやや年上の日本人。身なりは成功したビジネスマン。その男は脇息にゆったりと身を委ね秋芳に笑みを投げる。
      「出番かな?」
      「はい。」
      「なあ、その堅苦しい態度はいつ止める?」
      「全て終わりましたら。」
      「昔は一切遠慮などしなかったくせに・・・」
      「昔は昔、今は今ですから。」

      仕方がないな、という自嘲気味の笑みを漏らした男は、各務彰吾。秋芳がアメリカで修行したM&Aコンサル会社の先輩だった。各務はその後独立し、今では米国への進出を切望する日本企業向けのコンサルと、日本市場を狙う米国企業の先達を生業とするやり手のビジネスマンになっている。口コミと紹介でしか仕事を請け負わない各務は、業界内でも素性が知れていない1人だった。

      秋芳は各務を買った。文字通り。

      各務は、秋芳の申し出になんら質問もせず、即答で応えた。
      各務にとって秋芳は絶対的に信じられる男だった。裏を探る必要もない。自分より若い秋芳を各務も買っていた。たった1年、オフィスを共にしただけの間柄だったが、秋芳が人間的に信頼の足る存在であることはその1年で充分に伺えた。
      常に裏表を操る世界にいて、秋芳は自分の信条を貫き、それにより掴むべき顧客を失ってもサバサバしていた。くだらない輩に下げる頭は持っていないと言わんばかりに。

      それらは各務が相対していても、受け入れがたかったであろう顧客であったことは容易に想像できた。裏表がありすぎた。不穏な要素がありすぎた。
      秋芳がそのダークな部分を嫌ったとしても仕方がない。

      ビジネスとして考えれば、一時だけ上手い汁を吸い、放り出すことも出来た顧客を、秋芳は切り捨てた。それは当時在籍していた会社ではありえないことだった。
      結果秋芳の契約は1年で切れ、更新されることなく秋芳は日本に帰った。
      各務もまた秋芳によって目を開かされ、秋芳が辞めるとすぐにその会社を後にした。
      各務の姿勢は、競争に生きるハイエナの群れの中では甘いと、斬り捨てられるようなものではあったが、徐々に認められ、3年で充分な顧客を得るに至った。

      暗躍することを常とする各務に秋芳が接触してきたのはその頃だった。
      秋芳の、海藤の計画が形を成した3年前に遡る。

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